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因みにこれから見る映画は、真希の見たい話題の恋愛映画。評判は上々、なにより真希の好きな若手俳優が出演していた。
映画館は海側の駅に隣接している。
「すみません」と料理も運ばれぬうちに、テーブルに、店員がやってきた。
「お一人OKですかね?」
「あ、OKですよー」
「いつも、ありがとうございます」
真希を他店の店員と知っていたらしい。白シャツに黒の腰で巻くエプロンを身に着けた店員は、慣れた口調で相席の確認をすると、少し照れたように小さく頭を下げて入口へ駆けていく。
「こちらの席へ」
「あ、はい」
店員が連れてきたのは、不安げに肩掛けバックの紐を両手で掴む少年だった。
少年といえど彼の身長は高く見えた。ただ、まだ体に厚みがなく、ひょろっとして頼りない。文化部か年下か、と地曳はあたりをつける。顔は整っており、爽やかな服装がよく似合う、アイドルにいそうな少年。
「お、将来有望イケメン」瞬時に上から下までチェックをしたであろう真希が呟く。
「すみません、お邪魔します」
「どうぞどうぞ。君ひとり? 珍しいね」
席を勧めながら、真希は質問を投げる。初対面へのこの自然な対応はさすがである。
「美味しいって聞いて。えっと、……大学生さんですか?」
「違う違う高校生! 君は?」
「そうなんですか! 大人っぽいですね。僕中1です」
「思ってた以上にわっか!」
油断していれば、少年もなかなかの人たらしらしい。
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