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地曳は感心した。
中学生時代にも、軟派な台詞を吐く男子はいた。だが、本人に年頃の照れと背伸びがあったこともあり、チャラいと女子からは避けられていたのだ。
対して、この少年からはそういった照れや背伸びが感じられない。表情、仕草や言葉運び全てが自然。慣れているのか、それとも育った環境が違うのか。
これでもしわざと“大学生”と外しにきたのなら、末恐ろしい。実は、彼が「大人っぽい」と言った真希は、身長の割に子供っぽく見られやすいのだ。
ホストか詐欺師の素質がある。
現に真希は出会って数秒の間で、この少年に心を奪われているようだった。
と、少年が、地曳にも愛嬌のある笑顔を向けてきた。
「なに飲んでるんですか?」
「えー……と、ブラッドオレンジティーだっけ」
伝票を確認しながら答え、うろ覚えのそれを口に含む。と、少年は「ふうん」と図るように目を細め、
「僕も選ばなきゃ」と何事も無かったようにメニューを手に取った。
「ここはステーキもオススメだよ。ニンニクキツいけど」
「そうなんですか! ハンバーグも良いな」
「お待たせしました。しらすのピザです」
「おっ、私でーす」真希が手を挙げてピザを迎え入れると、タバスコに手を伸ばす。「でも、ピザのほうが時間かかると思ったー。まあ、矢恵熟考してたしね」
「なに頼んだんですか? あ、僕ビーフシチューとチョコミントアイススペシャルで」
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