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美味しいと聞いてきたパスタとピザが売りの店で、パスタでもピザでもオススメステーキでもなくビーフシチュー。
「あー……、カルボナーラパスタとオレンジケーキ、頼んだよ」
大人しい顔して凄い子だな、と苦笑しながら答えると、少年はまた図るように「ふうん」目を細める。
******
「翔くん面白すぎ!」
「そんなこと無いですよー」
真希の性格のせいか、少年の人心掌握術の妙か、デザートが来る頃には2人はすっかり打ち解けて名前で呼び合うほどになっていた。正直、地曳は引いている。
少年は、蔵田翔というらしい。
中学1年生でまだ12歳、数ヶ月前まで小学生という事を考えると、ここまで人の欲しい言葉や反応を自然に、さらに淀みなく繰り出してみせる少年は、饒舌を軽く飛び越えて浮世離れして見えた。大人びているでは足りない。
これで、顔もスタイルも良いのだから学年の女子は放っておかないだろう。
「てことは、真希さん結構SNS見てますね」
「そー、ついつい調べちゃうんだよねー」
YouTuberから盛り上がった話に耳を傾けながら、地曳はオレンジケーキにフォークを刺した。
「そういえばそれ、新しい機種ですね。僕欲しいと思ってたんですよ」
「そうなの? 使いやすいよー」
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