4th post : 1口も飲まれていないミントティー

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 因みにオレンジケーキの見た目は綺麗だが、味は普通だ。1番に目についた、甘いベリークリームの上にラズベリーやらブルーベリーやらがたっぷり乗った、ベリーベリータルトにするべきだったかもしれない。  そんなことを思いながら、ケーキを口に運んだ。 「えー、いいなあ。ちょっと見せてください(・・・・・・・)」  が、口に入る寸前だったオレンジケーキはフォークから落ちた。一瞬、地曳が驚きに固まったからだ。彼女はフォークを置き、周囲を見渡す。  地曳に動きを止めさせたのは、寒気だった。しかし、冷房が効きすぎているわけではない。冷えたわけではなく、なにかが通った(・・・・・・・)のだ。左腕をかすめて、地曳の隣をめがけて。  地曳は隣に座る真希に目をやる。 「いいよー」  真希は特に何も感じていないらしい。見たいと言った蔵田にスマートフォンを渡している。 「えーいいなあ。……あ、真希さん。誰かから連絡来た(・・・・)みたいですよ。出たほうがいい(・・・・・・・)んじゃないですか?」  気のせいだったか、と視線をケーキに戻しかけたその時、また、通った。  今度は“なにか”の来た方向が分かった。蔵田だ。  地曳が顔を上げると、目の前で、蔵田が真希にスマートフォンを返していた。  ただ、連絡が来たと言うのに、スマートフォンの画面は暗い。 「……ああ、うん。連絡来た(・・・・)。ちょっと外すね」  それなのに、なんの着信もないスマートフォンを片手に、真希は席を立つ。 「いってらっしゃーい」  真希の姿が店の出入り口の向こうへ消えるのを見送り、地曳は恐る恐る、真希に手を振る蔵田に目を向ける。  なにが起こったのか、わからなかった。 「チョコミントアイススペシャルです」     
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