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「どうもー」蔵田は運ばれてきたエメラルドグリーンに、僅かばかり目を輝かせていた。スプーンでアイスを掬い、スプーンにのるアイスを凝視する。
「……チョコミントアイスはじめて食べた時、歯磨き粉かと思いませんでした?」
「えっ、あ、……そうかも?」
突然の問いに疑問系で返すと、蔵田は口角を上げる。
「僕、この食うもんじゃ無い感じにハマってるんです」
「そうなんだ……」
それはまた妙なハマりかただ。チョコミント好きに怒られそうな。そう思いながら、蔵田の口の中に消えるエメラルドグリーンを、自らの記憶にあるその味を思い出そうとした。が、それどころではないと先程の寒気を思い出す。
店の出入り口を見るが、真希が帰ってくる気配はない。
氷もほぼ溶け、大粒の汗をかいたグラスを手に取り、赤いストローの先を唇で挟んだ。
地曳は、はやる気持ちを押さえるよう努める。
蔵田は“食うもんじゃ無い感じ”を堪能中で、それ以外のために口を開く気配もない。夢中になるその様子はやはり年相応な少年で、真希の不可解な行動も寒気も気のせいかもしれない、と。
そう、蔵田の方向から寒気が通っただけで、蔵田が発信源とは限らないのだ。
地曳は、ブラッドオレンジティーを喉に流し込む。
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