4th post : 1口も飲まれていないミントティー

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 そもそも蔵田が発信源、いや、その寒気が原因で真希がおかしな反応をしたのなら、“誰かに操られた”ということになる。催眠術ならともかく、寒気が原因で。ラジコンカーを動かすためにリモコンから発せられた電波のような物を感じた、とでも?  地曳は頭の中でまとめ、焦った数分前の自分に呆れかえった。 「あ、大きなカラス」蔵田の呟く声が耳に入る。  そう、結城ユウトや黒羽と出会ってから、どうも感覚が麻痺しているのだ。以前までは無視していた違和にまでひっかかっている。  そう短期間に何度も、そんな魔法やら超能力に出会うはずもない。  普通に考えれば、蔵田が着信に驚いて画面を消し、真希に渡しただけだろう。寒気は幽霊だとか心霊現象と考えたほうが自然だ。それはそれで、オカルトだし怖いが。  地曳はストローから唇を離し息を吐く。思った以上に強く挟んでいたらしく、ストローの形が変形していた。  しかしどうにか落ち着きは取り戻すことができた。  皿に落ちたオレンジケーキが目に入り、それを食べようと地曳はフォークを手に取る。 「地曳さんはさ、どうしてそうやって仮面をかぶって生きてるの?」 「……ん?」  オレンジケーキにフォークの先がついたところで、手が止まる。  顔を上げれば、蔵田がテーブルに肘をつき、手の甲に顎をのせ、値踏みでもするように目を細めて静かに地曳を見ていた。  いつの間にか、チョコミントアイスを食べ終わっていたらしい。器が空になっていた。     
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