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地曳はため息をついた。面倒な話を振られた、と思ったのだ。それに初対面に向かって無配慮に振る話題でもない。だが、友達に言わないことを考えると、話題に入ってこなかった地曳への当てつけかもしれない。
「まあ、人それぞれ色々あるからね」地曳は渋々返答をした。
蔵田の他人の在り方に対する見解は、一方的だ。正論だが、それだけでうまくいくわけではない。地曳だって、普通に生きたいから我慢をする。そこはやはりまだ中学生というか、彼は上手くいっているから、自信を持ってその正論を言えるのだろう、と。
「色々って?」
「んー。自信とか人目とか。蔵田くんがする“ちやほやされるための努力”もそれだと思うけど」
「僕の努力と一緒? そうかな。自信がないとか人目が気になるとか、普通じゃないとか単なる言い訳じゃないか。我慢は努力とは言わないよ」
「……ちやほやされるための努力に、嫌われないための努力ってない?」
「好かれる努力はあるけど。嫌われるならバイバイだよ」
「へー……ぇ。じゃあ蔵田くんは、ある日自分が常識と違うモノになって、ちやほやしてくれる友達から無視されるようになったらどうするの」
「その“常識と違うモノ”ならちやほやしてくれる友達に乗り換える」
「……電車みたいにいうね」
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