4th post : 1口も飲まれていないミントティー

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 なにもしなくても分かって楽だなあ。笑う蔵田を前に、地曳の感情は定まらない。  飲み込んだ言葉を見ていたかのように“それ”と指された焦りと衝撃。彼の言葉にいつの間にか苛立ち、まんまとそれを見透かされた羞恥心。初対面で“楽だ”と言われてしまった敗北感。全てが一気に押し寄せ続ける。 「あー、面白い」  ひとしきり笑って、周囲の視線を集めた蔵田は、満足したのか小さく息を吐いてから、テーブルに手をついて身を乗り出した。彼は、びくりと身構えた地曳の瞳が、彼の顔を捉えるのを確認するような間を取り、とっておきの秘密を口にする子供の高揚をその顔に浮かべる。 「僕ね、今日は実物を見に来たんだよ。『百聞は一見に如かず』って言うでしょ?」 「実物を、見る……?」 「うん。トクベツな力を持ってる人(・・・・・・・・・・・・)が何を考えているのか、見に来たんだ」  初めての当たり(・・・・・・・)だったなあ。蔵田は地曳を見て目を細め、楽しそうにそう続けた。  地曳は、未だ波立つカップの中のミントティーに視線を逃がした。  蔵田が見ているのは分かったが、顔を上げられない。  “力を持ってる人”それが誰を指すのか、蔵田の言う“力”がどんな力を指すのか、蔵田の表情が全てを物語っていたからだ。     
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