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「地曳さんの近くには、本物の魔法使いがいるみたいだし、ね」
そうして地曳の肩を、あやすように優しく2度叩くと、「じゃ、また」そう言って、去っていった。
食器の音と店員を呼ぶ声、色々な会話に、がやがやと周囲が騒がしくなった。
そんな中、無言で固まる地曳の頭の中で、その場ではかみ砕ききれなかった蔵田の発言がぐるぐると巡る。
熱くもないのに、額からじんわりと汗がにじむ。
蔵田は知っていた。地曳の力についても、最近出会った結城ユウトの存在も、その場で思ったことまでも。本人が口にしたとおり、力について知った上で近づいて、地曳がなにを考えているのか、本当にただそれだけを見に来たのだ。
「なんなの……?」
テーブルの上には、一口も飲まれていないミントティーが残されている。
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