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偶然会った人間に中二病的ハッタリをかます罰ゲームで、全て適当に言ったことが偶然にも全て当てはまっただけ。ならいいのだが。
「……いや、ないわ」
頭に浮かんだ安易すぎる考えに、地曳は頭を振る。
会うなら、人気のない場所がいい。力を知られている手前隠す必要がないのだから、まずくなったら力を使って逃げることができる。隠している人間にとって、人ごみでああいった危ない人間との遭遇は最悪だ。
しばらく、人の少ない道を歩こう。そう心に決め、彼女は顔を上げた。
ビル街の人はまばらだ。ただ、今夜はいつもとは違う。赤や緑、桃などのカラフルなTシャツを身に纏った人が多い。何かイベントでもあったらしい。
その人ごみから早く抜け出そうと、地曳はバス停へと急いだ。
と、どこかで、カラスの鳴き声がする。
その声に、結城の自称使い魔を思い出して、辺りを見回した。
だが、特になにもいない。地曳はため息をついた。
あんな、なんだかも分からない無礼なモノにでさえ、頼りたくなるのだから嫌なものだ。
そんなことを思いながら、駅へ向かう人の波に逆らって歩いた。
コンビニを通り過ぎ、ファストフード店を過ぎると、バスを待つ列。その列に加わろうと、有名予備校の看板を通り過ぎようとする。
しかし、この日はこんなことまで上手くいかない。
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