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――トクベツな力を持ってる人が何を考えているのか、見に来たんだ。
初めての当たりだった。といった蔵田の言動を思い出した。
――殺された人たちは使えたのかな? ……魔法。
着信のない携帯を持って席を離れた真希と、ナイフを握る男を重ね、近辺で起こる不可思議な通り魔を思い返した。
一生分の不幸は、最悪な日は、まだ終わっていなかった。
「……魔法使いは1人でいい……」
1番の最悪を頭に描いた耳に、男の呟きが飛び込み、地曳は震えながら確信する。
殺される。
明らかな命の危機に、自らが思う以上に早く彼女の体は動いた。
ナイフを再度振り上げるついでに振られた拳を避け、男の顔に向けてカバンを投げつける。
カバンは顔に見事命中した。カバンに入っていたモノが散り、通行人にあたって声が上がるが謝っている余裕はない。
彼女はよろけながら走り出す。
あてはないが足は人ごみではなく、とにかく人のいない場所へと向かう。
ちょうど青に変わった交差点の信号を渡る。
右折してきた車にクラクションを鳴らされながら後ろを振り返れば、数メートル後ろに男の姿がある。
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