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#女子高校生と魔法使い
灰色が基調のスカートが、春の風にふわりと軽くなびいた。新調したローファーの茶が、日の光をはじいて光る。
自動車の走る音を耳にしながら、地曳矢恵は五月晴れの空を見上げる。3日間続いた曇り空が嘘のように、空にのぼる太陽に照らされた緑がまぶしい。目をつぶれば、木漏れ日の温度が心地よく染み渡たった。
高校からの帰り道、この春2年生となった彼女は、駅までの道を歩いていた。その身を包むのは、2年目に突入した制服。入学当初は少し大きかったブレザーも今では程よくフィットして、もう体の一部だと大げさに言いふらしたくなるほどになっている。
制服を「嫌だ」という友人もいるが、地曳は好きだった。全てを画一に、異常を視認しにくくしてくれる。派手にしすぎなければ、地味にしすぎなければ、誰もが手軽に"普通"を手に入れることが出来る最強の戦闘着。
信号が赤に変わる。
足を止めるその先には、いつもの落ち着いた町並みが続いていた。
6限も終わり、我先にと校門へ急ぐ波に乗って地曳は高校を出た。それでも、彼女の周りに同じ高校の制服を纏う学生の姿は少ない。
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