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振り返ると、20代前半の二人組の男がグラスを持って立っていた。
派手なアロハシャツを着た男が、ニヤニヤ笑いながら隣に座った。
「俺達と一緒に飲まない?」
紫色のポロシャツを着た、小太りの男が、反対の席に座る。
「何飲んでるの?俺達がご馳走するからさ」
二人の男に挟まれる形になり、あたしは露骨に嫌な顔をした。
勧めもしないのに、勝手に座るな!
そう、怒鳴りたい気持ちをぐっとこらえ
「ごめんなさい。ひとりで飲みたいの」
とやんわり断る。
アロハ男が、あたしの顔を覗き込んだ。
「何?失恋でもしちゃったの?俺が慰めてあげようか」
ポロシャツ男がすかさず
「え~、こんなキレイなおネエさんを振るなんて、信じらんないな。
そいつ、アホだね」
酒臭い息を吐きながら、大げさに首を振る。
いつ、誰が失恋したなんて言った!
男達を無視して、グラスのワインを呷る。
「わぉ、いい飲みっぷり」
そう言いながら、アロハ男がボトルのワインをジャバジャバとグラスに注いだ。
滴が飛び散り、あたしのパールホワイトのワンピースの胸元に赤いシミを作る。
「ああ、ごめんね」
おしぼりを掴んだ手が伸びてきた。
あたしは、その手を払い除け、冷たく一言
「大丈夫ですから」
と言った。
「そんなに怒んないでよぉ」
相変わらず、品の無いニヤニヤ笑いを浮かべながらアロハ男が
猫なで声を出す。
いきなり、ポロシャツ男が、グラスのステムに添えたあたしの手に自分の手を重ねてきた。
全身にぞわっと鳥肌が立つ。
「おネエさん。色白いね」
アロハ男が、背中まで伸びたあたしの髪を撫でながら、くんくんと鼻をひくつかせた。
「いい匂い。香水何つけてるの?」
―――――ぷつん
あたしの中で、堪忍袋の尾が切れる音がした。
もう、我慢の限界!
勢いよく立ち上がると、グラスになみなみと注がれていたワインを二人の男の頭上にぶちまけた。
一瞬、男達の動きが止まる。
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