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「レムくん!!無事でホンマに良かったー!!」
連絡を受けた母が明け方少し前に交番に飛び込んできた途端、僕を見てギュウッと抱きしめてくれた。その柔らかくて温かな感触に、僕の押さえ込んできた気持ちが一気に溢れて、涙が止まらなくなった。「マクラ営業」から帰ってきた母はお客さんのせいかタバコの匂いがしたけど、僕はそんなことよりも今はこうしてずっと母に包まれていたかった。
あのあと僕の家に駆け付けた警察官が見たのは、僕の部屋の床で気絶したまま寝転がっていた強盗犯の男の姿で、男はあの枕の上に自分の頭を乗せて眠るように横たわっていたということだ。警察官の取り調べに対して男は「子どもを襲ったのは覚えているが、それ以外は何も思い出せない。寝たら頭がスッキリした。もう二度と犯罪には手を染めずに、真人間になる」と供述したらしい。
警察は強盗の犯行を裏付けるためとして枕を一旦回収したが、枕カバーに人の顔は浮かんでいなくて、特におかしい所も見られなかったそうで、しばらくしたのちに枕は無事に僕の元へと戻ってきた。
「お母さん。この枕が僕を強盗犯から守ってくれたんだよ」
あの一件からようやく落ち着いた頃、家で洗濯されて干されている枕カバーとその中身のクッション材を指さして僕が言うと、母は当たり前のように「うん」とうなずいた。
「そりゃそうやろうね。だって、その枕はレムくんのお父さんやもん」
「え!?どういうこと!?」
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