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テレビを見ながらチャーハンを食べ終わった僕はシャワーを浴びて歯磨きをし、夜十時にはベッドに入った。学童保育でドッジボールをしすぎて、頭も体も重かった。赤ん坊の頃からずっと使っている枕に顔を付けると、一人で寝る寂しさが枕に吸い込まれるように自然と消えていく。枕の中身はスポンジみたいなクッション材で柔らかくて気持ちがいい。お母さんが「マクラ」になってお客さんを受け止めるみたいな大きな包容力を、僕は自分の枕に感じながら眠りに落ちていった。
どれぐらいの時間が経ったのだろう。自分の部屋でミシッという音が響いた気がして、僕は不意に目を覚ました。窓のカーテンの隙間から微かに外灯の光が漏れて、僕の机と椅子を子連れの動物みたいな形に浮かび上がらせている。そのシルエットが不気味で思わず目をそらした僕は、頭を軽く起こして視線をゆっくりと移動させた。枕に包まれている安心感が、夜の闇の中ではなんだか頼りなく思える。視線が自分の足先まで来たとき、僕の心臓が氷に直接触れたみたいにギュウッと縮み上がった。視界に入ってきたのは黒くて大きな塊――それも、背の高い男の人の影だった。カーテンの陰で顔はよく見えなかったが、狼みたいな鋭い目が僕をにらみつけているのが暗い中でもくっきりと分かった。
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