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「ひっ!」
思わず出た僕の声はかすれて小さかったが、目の前の影が僕の声に驚くように動いた。
「おい、ガキ。騒いだら殺すぞ」
その影から低くてドスのきいた声が聞こえた途端、僕の体は金縛りにあったみたいに動かなくなった。喋った影の手元が他の部分より白く浮かび上がっていて、その尖った形はナイフそのものだった。恐怖で喉の奥が締め付けられたように苦しくなった。
「サッサと起きてカネ出しな。親の隠し場所くらい知ってんだろ?」
男はナイフを僕に向けてオラオラと振っている。どこから入ったんだ?僕はすっかり目の覚めた頭でドキドキしながら考えた。あ!風呂場だ!窓を開けたあと疲れて鍵をかけるのを忘れてたんだ!
「お前が明け方まで家に一人なのは調べついてんだ。親が帰ってきたら二人とも殺すからな」
その言葉に僕はベッドから跳ね起きた。お母さんが帰ってきたら、もっとひどいことになる!慌てた僕は枕と布団を押しのけて床に飛び下りようとした。
「急ぐふりして逃げんじゃねーぞ!俺の言うとおりにしろ!」
男の手が僕の肩を強くつかんだ。鷲の爪がめり込んだみたいなズキッとした痛みが僕の肩を走った。
「痛い!やめて!」
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