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うそうそ、だってそんな少女マンガとか乙女ゲーみたいな急展開。うわー、どうしよう! じわじわ嬉しい気持ちがこみ上げて私の口角はぐぐっと上がる。
「食堂とかでさ、目が合うとすごい顔するじゃん? 電車で隣になったらどうするんだろう、しかも眠っちゃったらどうなんだろうと思ってさ」
ミーハー根性ありがとう。そう、自分に感謝する。航生くんが気になってたのは「すごい顔」をする私。自分では航生くんを見た瞬間、イケメン過ぎて輝いてるとか思ってたけど、そう言うってことはよっぽど眩しそうな顔……か、もう想像もつかない面白い表情をしてるんだろう。航生くん的には、動物園とかであんまり見たことない動物に食いつくみたいな、きっとそんな感覚。憧れの人に無自覚の恥を突きつけられるのはすごい恥ずかしいことだけど、それで覚えてもらえてるのなら全く問題ないし自分よくやったって思ってしまう。それをどう伝えたものかは悩むところだけど。
「あ、終点」
私が口を開くより前に電車は、終点に間もなく着くとアナウンスを告げる。やばい、そろそろなにか言わなきゃ。焦る気持ちに拳を握る。整えたばかりのネイルが手のひらに食い込む感覚が、私の中のふわふわした気持ちを引き締めた。
「あの、」
「ん」
私はじっと航生くんを見つめる。ぱっちりした瞳、整った鼻筋、薄く形のいい唇。本当に、本当に綺麗で可愛い顔。ああ、本当に私は航生くんが。
「好きです」
ぱっと出たのは、一番大切な言葉。いたずらだとしても、こうして隣に掛けてくれたこと、それを素直に話してくれたこと、私のことを覚えてくれたこと。航生くんのそのひとつひとつへの感謝を、彼への愛をひとつの言葉に込めて。あ、なんかぐっと胸が締め付けられて泣いちゃいそう、なんて思ってると航生くんはぷっと吹き出した。
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