第五章 涙のわけ

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 「じゃが、あの槍士……こ奴は無関係じゃ」 「シャウンの事か」 「あの小僧、何かと苦労しているようだの」 「苦労……となると、板挟みってとこか」 「察しがいい。騎士団内部の揉め事に振り回されておるわ」  目的は達成された。リヴィル坑道で魔物が活発化した原因は、やはり人間が関与している。あの場所にシャウンが居たことを少し疑問に感じたが、ルゼッタがそう言うのであれば彼はある意味で被害者といったところだ。騎士団の中で唯一おれが話をできるのはシャウンだけだが、あいつもあいつなりに苦労してるんだな。  「レイジ、気をつけよ。この問題、一筋縄ではいかんぞ」 「どういう意味だ」 「そのままの意味じゃ。今のお主の甘さでは……この先生きる事は出来ぬ」 「死ぬのか……おれは」 「今のままではじゃ。故に今日、本来であればお主は死んでおろう?」 「盗み見はよくないぞルゼッタ」  小さく笑う彼女の声を聴き、小袋から白金貨一枚を机に置いた。
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