第五章 涙のわけ

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 肌を刺すような厳粛な雰囲気が漂う聖堂の奥にたった一人跪く人の姿が見えた。昼を過ぎ、参拝者たちはみんな祈りを終えたのだろうか。それでもなおただ一人、微動だにせず祈りを続ける者がいる……彼女なのか。  「参拝の時間は過ぎ……何をしに来たのかしら」  不意に声をかけられて言葉に詰まったが、声の主は間違いなく謝罪しなければならない彼女だった。ルゼッタの占いが本当ならば、声色に怒気が含まれていると思ったがそうでもない。怒気というより、優しさを感じるようなそんな気がした。彼女はそう言いながらも姿勢を変えることはない。おれは静かに彼女の背後まで歩みを進め、深く息を吸った。  「すまなかった」 「何のこと」 「魔法……お前だって、おれ以上に辛いときがあったのかもしれない。自分の事しか考えていなかった」 「そう」  彼女はゆっくり立ち上がると、そのまま振り返り、深くかぶったローブのフードを脱いだ。
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