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彼女の目をしっかり見ることができない。こういう時、ちゃんと相手の目を見て謝らなければ誠意は伝わらないのに……わかってはいるんだ。だけどなんでだ、恥ずかしい気持ちもあるし、チラチラとしか視線を向ける事ができない。
「ねえ」
「ん」
「私を見て」
「見てる……だろ」
「見てない。ちゃんと私を見て。私の顔、怒ってる?」
恐る恐る彼女の鼻に視線を向けて、ブラウンの瞳とおれの視線が重なった。どうして、彼女は笑っているんだ……この状況、お前の怒りをぶつけられても何も言えない状況なのはおれなんだぞ。どうしてだ。
「怒ってはいない。むしろ笑ってる」
「でしょう。つまりはそう言うことよ。私は怒ってなんていないし、正直に言えば今こうしてここにあなたがいる事が嬉しいの」
「嬉しいって、はぁ?」
「それでも、あなたの言葉でちょっと傷ついたのは事実だし、タダで許そうだなんて思っておりませんわ」
「どうすればいい」
沈黙が訪れる。
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