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そりゃ、確かに、朋之はお堅い会社に勤める正しいサラリーマン。 毎日きちんとスーツを着て出勤し、土日はしっかりお休みだ。残業手当もきっちりつく。 片や、吉川麗奈は大手とはいえ、激務で知られるテレビ制作会社勤務。 仕事にやりがいはあるものの、残業や突然の呼び出しなんてしょっちゅう。 給料も労働時間を考えれば驚くほどの薄給だ。 朋之と最後にまともにデートしたのは、少なくとも一年以上は前のはず。 声を聞いたのだって、二週間前が最後。テキストでさえ3日前にやりとりしたっきりだった。 事実上、付き合いは崩壊していたのかもしれない。 麗奈は、ぬるくなったアイスコーヒーを最後まで飲み干すと、伝票を掴んでレジに向かった。 すでにドラマの撮影は始まっているはずだ。 気持ちを切り替えてスタジオに行かなくちゃ、と頭では思っていてもなかなか足が動かなかった。 とりあえず。 とりあえず、今の現場が終わるまでドラマの仕事をするか。 それからどうするか考えればいい。 麗奈がスタジオに足を踏み入れた時、ただならぬピリピリした空気に支配されていた。 撮影が完全にストップしている。 プロデューサーだかディレクターだかの怒号が飛んでいた。 「まだできないのか!?」 「すみません! ただいま!!」 何人ものスタッフがあたふたと電話をしたり走り回ったりしている。 麗奈は知った顔を探してスタジオの中をきょろきょろと見て回る。 顔見知りのスタッフを見つけて、小声で何があったのか聞いた。
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