君の隣

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息が切れて立ち止まると、足元の水たまりに浮かんだ波紋を見て、雨がもう降り始めたんだと気づいた。夢中になって走っていたからスニーカーに跳ね返った泥にも気づかなかった。 ーーちゃんと天気予報を見て折り畳み傘持ってきたのにな。 フッと息をついて、水滴のついたスクールバッグの底に手を突っ込むと、奥から表面がしわくちゃになった折り畳み傘が取り出せた。 初めから分かっていた結末だったけれど、それでも、私は彼の支えになりたかった。たった一時の間でもいい。ほんの一瞬でもいい。彼が抱えてる何かを忘れて、笑えるような時間を作ってあげられたらって、そんなことを思っていた。 いや本当は……、浅ましくも、隣に居たら彼がいつか私を選んでくれるんじゃないかって思っていたんだろうか。だから今、友達になりきれなかった役立たずの心が、私の涙腺を緩ませているんだろうか。
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