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膝上10センチまで折ったスカート。カールアイロンで巻いてギリギリまで茶色く染めた髪。目立たない程度のメイク。生まれ持った白い肌にぱっちり二重の目。 正直に言うと、私はモテるし、クラスでも目立つグループに属している。だけど、どんなに可愛くなる努力をしたって、手に入るものは私が手に入れられる程度のものに限られる。 「おはよう!」 教室に入って真っ先に向かった先は、彼のいるところだ。 「おはよう、伶奈(れな)」 そう言って隼(しゅん)は笑った。目元まで揃えてある前髪が揺れる。奥二重の瞳が私に向けられる。それだけで私の胸の奥はギュッとなって、彼をずっと見つめていたくなる。 「朝からイチャついてんじゃねぇよ、お前ら」 急に割って入ってきた慎二も、クラスの中で仲良いメンバーの1人だ。 「挨拶してただけだろーが」 「空気感だよ空気感!2人を取り巻くあま~い空気ってやつ」 「何言ってんのよもう~~」 もう慣れたから、自然に振る舞える。振舞えているはずだ。言葉を発しながら、ちゃんと笑えているのかな、と周囲の反応を見ながら確かめる。私と隼が付き合ってると誤解している人は多分多い。学校のある平日は毎日、私のバドミントン部の練習が終わる時間まで、帰宅部の隼は私を待ってくれる。決まって17時に閉まるギリギリまで図書室にいて、それよりも私が遅くなったら教室に移動して待っててくれる。でもそれは彼がそう望んだからではなく、私が彼の弱みに付け込んだからだ。
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