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「あーーーーー!!!隼ずるい!!!」 大声で叫んでいるのは私の小学4年生の弟だ。キッチンで洗い物をしていても届くくらいの声量だ。またテレビゲームで隼に負けたらしかった。 「お前が気ぃ抜いてるのが悪いんだよ」 小4相手に何大人気ないこと言ってるんだか。クスッと笑うとそれに気づいた隼が振り返ってにやっと笑ったから、持っていたコップを落としかけた。 うーーー。やっぱりカッコいいんだよなぁ……。 あの日以来、隼は学校帰りに私の家に寄るようになった。弟の亮介は17時までは小学校にある児童クラブで預かってもらえるけれど、共働きの両親が帰ってくるのは20時過ぎだ。だから亮介のために早めに帰ってあげなさい、といつも両親に言われる。あの日もそうだった。帰りたくないという隼の背中がいつもより小さく感じてしまって、気づいたら私は声をかけていた。 『じゃ、じゃあさ……ウチ来る?』 『え……、あ……ごめん。変な事言って気ぃ遣わせちゃったよな。ちょっとこの前の模試の成績悪くってさ。まだ隠してるから気まずいんだよなぁ……』 あの時の私は隼を家に誘ってしまった緊張でドキドキして頭がいっぱいで、彼がごまかすように笑ったことに気づけなかった。
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