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朝。ボクはいつもどおり目を覚ます。 ベッドの上には一匹のチワワ。ボクの相棒だ。 まだ眠ってる。お寝坊さん。 パジャマから服に着替え、出かける準備をする。 赤いリュックを背負い黄色の帽子をかぶる。 部屋を出る。 お父さんとお母さんの部屋のドアを開ける。 ベッドで二人とも寝ている。 そっとドアを閉め、リュックに食べ物と飲み物を詰める。 居間にはおじいちゃんがソファで、 おばあちゃんはキッチンのテーブルにうつ伏せで寝ている。 あの時から何も変わらない。 空から鐘のような音が聞こえた。 それからみんな眠ったまま、目を覚まさなくなった。 近所の人も友達も、犬や猫も鳥も。 起きているのはボクだけ。 「みんな、目を覚ましてよ」って大声で泣いた。 たくさんたくさん泣いた後、ボクは旅立つ事を決めた。 ボクと同じように起きている人を探すため。 玄関のドアを開け深呼吸をする。 東の空に太陽が輝く朝。ボクは冒険の旅に出る! 「あら、目が覚めたのね」 赤ちゃんの泣き声が部屋中に響く。 「ママ!弟が泣いてるよ!」 ベビーベッドの上の赤ちゃんを、 兄である男の子と飼い犬のチワワが見つめる。 「コワい夢でも見たのかな?」 「さぁ、どうなのかしらね」 そう言うと母親は彼を抱き上げあやす。 しばらくすると彼は泣き止み、兄の方を見てニコッと笑った。 “みんな起きたんだ!良かった!” 夢を夢と理解していない赤ちゃんは微笑んだ。 その笑顔の本当の意味を知る者はいない。 でもそこにいる家族の誰もが幸せな気持ちになった。
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