隣席の君

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 「この不幸のメッセージは厄介ね。自分で期限を設けておきながら、まるで警告するみたいにその期限が来る前にフライングで押し寄せてくる。これでは期限を過ぎた今日の夜、どんな手段を使ってくるか判らないわ」 「じゃあ、このメッセージを他の人に送るしかないっていうのかい?」  僕は慌てて言ったけれど、本当のところは微塵もそんな事をしたいと思っていなかった。もともと、不幸のメッセの面倒ごとを他人に押し付けるようなやり方は好きじゃなかったし、その上この呪いが本物である可能性が限りなく高くなった今、それを他の人に押し付けるなんて事は尚更したくない。だけどそこで、はいそうですかと犠牲になれる程、お人好しでもなかった。 「ちょっとまって、今考えるから」  そう言うと、坂上さんは唐突に目の前ですやすやと眠り始めた。僕はいつまで待てば良いのだろうかと時間を案じて途方に暮れたけれど、そんな僕の心配を余所に二十分もすれば彼女は目覚め、そうしておもむろに取り出したハサミで自分の髪の毛を数本切った。 「これ、あげるわ」  そしてそこには、彼女の三十センチはあろうかと言う長い黒髪を手渡され間抜けな顔をした僕が居た。 「お守り。今日は昨日のお守りも身に付けた上で、その髪の毛を枕の下に敷いて眠ってみて」 「ありがとう」  普通に考えれば、昨日今日話し始めたばかりのクラスメイトから髪の毛を唐突に貰うなんて、気持ちが悪いと思うものだろう。だけど昨日の夢で妙にリアルなアレを見た後の僕は心の余裕がなくなっていたのか、藁にも縋る思いで貰った髪の毛を素直に枕の下へ敷いて眠りに就いたのだった。
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