桜の木の下に

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 先輩は天体観測が趣味だった。  だから、プレゼントは星座の模様が入ったマグカップにした。  休憩の時にでも、これを使ってコーヒーを飲んでもらいたくて。  どの色にするかで、三日も悩んだものだ。  ・・・・・・沙耶にも、相談したっけ。  私はマグカップを置き、色褪せたメッセージカードを手に取った。  そこには、私の精一杯の想いが綴られている。  震える手で書いた、告白だ。  私は幼い字を眺め、懐かしさに目を細めた。  あれから、十年。何度か恋もして、あの頃の傷は完全ではないにしろ癒されている。  あまり痛みを感じない自分に安堵しながら、後始末を終えた。
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