2人が本棚に入れています
本棚に追加
今、私の左手の薬指には、控えめに輝く結婚指輪がはめられている。
これを見たら、沙耶はどんな反応をするだろう。
「きっと驚いて、それから」
昔と同じ笑顔で、祝福してくれるだろうか。
あの後、二人はどうなったのだろう。
話たいことがたくさんある。
沙耶は私を許してくれるだろうか。
視線を上向けると、あの頃と同じ抜けるような青空が広がっている。
「良い天気」
笑みをこぼすと私は止まっていた足を再び動かしはじめた。
恋に破れて亡骸を埋めた少女はもういない。
こぼれ落ちた欠片はきらきらと輝いて、思い出を照らしている。
そうして、懐かしい親友との再会を優しく彩ってくれるだろう。
頭上の桜の木はただ緑色の葉を揺らす。
あたたかく、見守るように。
最初のコメントを投稿しよう!