桜の木の下に

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 十年ぶりに訪れた母校は、変わらぬ喧騒で迎えてくれた。 「懐かしい。全然変わらないなあ」  呟き、ゆっくりと歩きながら、辺りを見渡す。  恩師に挨拶した後、ひとつ頼みごとをした。  十年前に埋めた私の欠片を、掘り出すのだ。 「河内先輩・・・・・・」  十年の間に長く伸びた髪が風に煽られて、青い空に翻る。  記憶にある懐かしい笑顔を追いかけるように、私は校庭へと向かって足を進めた。    初夏の風が一瞬だけ、桜の香りを運んだ気がした。
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