桜の木の下に

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 十年前、私は陸上部に入っていた。   「優香、タイムどうだった?」 「ちょっといまいち。沙耶は?」 「あたしもあんまりよくなかったよ。スランプかなあ」  うーん、と小首をかしげると長い髪がさらりと揺れる。  沙耶は、私の親友で些細な事も打ち明けられる仲だった。  小柄で華奢な彼女は私と違って女の子らしく、ガサツな私の憧れでもあった。 「おい、お前ら」 「痛っ」 「きゃっ」  沙耶と話しているといきなり頭に衝撃が走り、私は後ろを振り返る。  そこに立っていたのは、一つ上の先輩、河内浩介先輩だった。 「か、河内先輩・・・・・・」  すらりとした立ち姿、日に焼けた精悍な顔に浮かぶ、やや苦笑気味の表情。  河内先輩を見たとたん、胸がいっぱいになってしまう。  私は、彼に淡い想いを抱いていた。
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