2人が本棚に入れています
本棚に追加
十年前、私は陸上部に入っていた。
「優香、タイムどうだった?」
「ちょっといまいち。沙耶は?」
「あたしもあんまりよくなかったよ。スランプかなあ」
うーん、と小首をかしげると長い髪がさらりと揺れる。
沙耶は、私の親友で些細な事も打ち明けられる仲だった。
小柄で華奢な彼女は私と違って女の子らしく、ガサツな私の憧れでもあった。
「おい、お前ら」
「痛っ」
「きゃっ」
沙耶と話しているといきなり頭に衝撃が走り、私は後ろを振り返る。
そこに立っていたのは、一つ上の先輩、河内浩介先輩だった。
「か、河内先輩・・・・・・」
すらりとした立ち姿、日に焼けた精悍な顔に浮かぶ、やや苦笑気味の表情。
河内先輩を見たとたん、胸がいっぱいになってしまう。
私は、彼に淡い想いを抱いていた。
最初のコメントを投稿しよう!