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先輩は後ろを向いていた。
見間違う筈のない河内先輩の後ろ姿なのに、まるで知らない人のようだ。
それは、先輩が女の子を抱き締めていたからだ。
華奢で小柄で、長い髪が綺麗な女の子。
「沙耶・・・・・・」
それは沙耶だった。
頭が痺れたように何も考えられない。
私はただ、二人を見た。抱き締め合う二人を。
頬を赤く染めた沙耶が私に気づき、顔色を変える。
「優香ーー」
顔を強張らせた沙耶が何かを言いかけた時、私はその場から逃げ出していた。
荒い足音が響く。
その度に私の心がバラバラになって砕け落ちてゆく気がした。
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