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ある地域に、めざましい発展をとげるニュータウンがあった。 住みやすくオシャレな街として年々有名になり、移住希望者は後を絶たなかった。 ある時、記者がその町の市長にインタビューをする機会を得た。 市長は若い時は一級建築士として名を馳せ、市長となった現在も建築士時代のノウハウを活かし街の発展に尽力していた。 市長が設計する街は、景観の美しさと便利さが同居する素晴らしいものだった。 知性と行動力、カリスマ性を兼ね備えた市長は、街の住人から絶大な人気があった。 記者は『夢の街の実現者』という見出しで市長のカリスマ性に焦点を当てた記事を書こうとしていた。 時の人となりつつある市長のインタビュー記事は、絶対注目されると目論んでいた。 記者は聞いた。 「この街は住みよい街としてとても人気がありますが、どのようにこの街を設計したのですか?何かコツがあるのですか?」 市長は微笑みながら言った。 「何度も何度もいい街にするためシミュレーションしていますからね」 「何かパソコンやソフトを利用しているのですか?」 このカリスマ市長が使っているソフトがあれば、それだけでかなり話題になるぞと記者は思った。 だが以外にも市長はこう言った。 「君、明晰夢って知っている?」 記者は首をかしげた。 「明晰夢は、自分が夢の中で、これは夢だと自覚しながら見る夢さ。明晰夢はね、夢の中を自分の思い通りに動くことができるんだ。僕は若い時から明晰夢を見ることができてね。それで夢の中で街をつくったんだ。毎日少しずつだけれど、やれこの建物は高すぎるとか、やれこの色遣いは派手だとかね。そうやっていろいろ試行錯誤してできた街が、このニュータウンの結果だよ」 記者は驚いた。夢の中で街づくりをシミュレーションしているなど想像もしていなかった。 ここで一つ質問が芽生えた。 「夢の中で街をつくっていたのは分かったのですが、どうしてそれを実際現実にしようと思ったのですか?」 「だって、僕の夢の街がいくら素晴らしくたって誰にも説明できないんだ。所詮僕の夢のなかの世界だからね。でもそれは悲しいだろう?だから建築士になってニュータウンの市長になったのさ。まさに僕の素晴らしい夢の街を実現するためにね」 市長は嬉しそうに微笑んだ。 だが記者は背中に寒気を覚えた。 そして同時にこの記事をどうやってまとめるか困っていた。
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