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また夜の闇の中で、時計が3:33を示していた。ドアから外にはでられなかった。太郎は、見覚えのあるその時刻を眺め、しばらく待っても時刻が変わらない事を冷静に確認した。 時間の逆行が止まり、また時間停止の状態になっている。 もっとも、太郎の精神はこの異常な状況にも耐性ができており、その後またすぐに眠りについた。そして再度目覚めた時に、相変わらず時計が3:33であったのを見ても、何も思うところはなかった。 なんであれ、自分に出来る事は眠り続けることだけ。部屋から出られないのであれば、眠り続ける以外の選択肢はない。 この時も、太郎自身は知る由もないが、元の時間軸に戻るための道程を、太郎は着実に前に進んでいた。太郎の寝相の力が再度、時間軸に作用したのである。 太郎の時間は、「マイナス時間」に再度「虚数時間」が作用し、「マイナス虚数時間」となっていた。虚数時間の時間軸を、マイナス方向に進んでいる状態である。通常の時間軸とまた、3:33の時点で垂直に交わったため、時計の表示は3:33で止まってしまった。 しかし、また重ねての説明となるが、虚数というのは、二乗すると’マイナス1’になる性質の数である。さらに、’マイナス1’を二乗すると、’1’になる。 「マイナス虚数時間」に、再度、太郎の寝相の力が作用すれば、太郎の時間は通常の時間軸をプラス方向に進んでいく、本来の「時間」となる。 太郎は眠り続けることで、無自覚にではあったが、その本来の「時間」を、着実に手繰り寄せていった。
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