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全てが解決したかに思えた太郎であったが、一つだけ、太郎にとっての疑問が残った。テレビやネットで日付を確認すると、寝室から出られなくなった夜から、今は3年ほど前らしい。 知人に連絡を取ろうとしたところ、スマホから一部の連絡先が消えていて、残っていたのは3年以上前からの知り合いの分だけであった。古い知人たちに連絡をし、自分の身に起こった事を伏せながら会話してみたところ、3年前の状態で、知人たちは当たり前の日常を過ごしていて、太郎とも昨日会ったなどと言った。それは太郎の3年前の記憶とも一致し、どうもこの超常現象は自分の身にしか起こらなかったことは間違いないようであった。 それに、長い時間を寝室でずっと過ごしたという実感はあるものの、身体がその分年老いたとも思えなかった。そうなると、現実に太郎が寝室から出られないでずっと寝ていたことを、他人に説明できる証拠はなかった。 そうして次第に、1日、1日と3年前の日常に溶け込んでいくうちに、太郎は、3年間分の記憶と、その後、自分が寝室でずっと寝て過ごしたことを、ずいぶん実感があってリアルではあったけれども、やはり自分が一晩で見た夢だったのではないかと思うようになった。     
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