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太郎はしばらく時計を凝視した後、スマホを時計のとなりに置き、それから心の中で60秒を数えた。時計とスマホの両方とも、3:33という時刻の表示は変わらない。300秒まで数えても、時刻の表示は張り付いたように変わらず、3:33のままだった。 すっかり眠気の覚めた頭で、太郎はもう一度考えてみた。今何が起こっているのか、太郎に出来た解釈は2つだけだった。 1つめの解釈は、これは夢だ、というもの。 2つ目の解釈は、時間が停止している、というものである。 太郎はきわめて一般的な常識人であったので、この2つ以外のことは思いつかなかった。そして、どの解釈が正しいのか確かめる方法も、常識的なこと以外は思いつかなかった。 まず太郎は、自分の頬をつねってみた。結果として、相応に痛かった。それだけで、これは夢ではないという証拠にはならないこともわかっていたが、今までに痛みを伴う夢を見た事もなかったので、いったんはまずこれは夢ではない、という理解を太郎はした。 次に、時間が停止しているかどうかを確かめるため、太郎は家の外の様子を見ようと思い、カーテンを開けて窓の外を見た。しかし窓の外の風景は何も動くものがない夜の住宅街というだけで、判断の材料にならなかった。 では家の外に出て確かめようと、太郎は寝室のドアを押して開けようとした。ドアはまったく動かなかった。 え。 もういちど太郎はドアを開けようとしたが、ドアはやはり全く動かなかった。     
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