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仮に時間を逆行しているとして、また、今が午前2時だとして、8時間ほど待てば、午後の6時になるはず。であれば、ずっと永遠に続くと思っていたこの夜の帳が上がり、夕方の風景が窓から見られるかもしれない。そして、窓から何か動きのあるものが見えれば、今までよりなにかわかる事があるかもしれない。 太郎は時計を見つめながら静かに待った。時計は時刻を順調に逆向きに刻み、表示が19:30になったあたりで、太郎は窓の外が少しずつ明るくなってきたのを感じた。 それからは時計を手に、窓の外を見つめ続けた。空は次第に燃えるような赤色を映し、やがて直射日光が、太郎の顔を照らした。 しばらくの後、太郎は自分の手が濡れたのを感じた。涙が、瞳から頬をつたい、顎から思ったよりも多量にぽたぽたと手に滴っていた。 太陽とは、こんなにも唯一無二で素晴らしいものだったんだなと、太郎は感動していた。 それは西の空から昇ってきた太陽で、時間が逆に進んでいる異常事態の証拠であったが、あらゆることが逆であっても、空に昇り強烈な光を発する太陽の存在は、太郎の心に点った灯を、大きく確かなものにした。 太郎の寝相の力であっても、時間軸に作用する事象の発現は、およそ奇跡に分類される程度に稀な確率でしか起こりえないものであったが、太郎は2回目のその力の発現によって、事態の解決に一歩近づいた。     
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