12.薬売り

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「それじゃ姉先生、源さん、行ってきます!」総司はうれしそうな顔を隠そうともしなかった。 「留守中、よろしくな」勝太がさくらに笑いかけた。 「言われずとも、ここは私の家だ」さくらもニッと笑い返した。  こうして、勝太と総司は日野へと旅立った。 「とは言ったものの、なぜ私が留守番なのだ」とふてくされるさくらをよそに、「懐かしいじゃないか、私とさくらの二人きりだ」と源三郎は笑って二人を見送った。  勝太と総司が日野の佐藤彦五郎邸に到着すると、勝太は玄関口に見知った青年を見つけ、声をかけた。 「トシ!帰ってきてたのか!」 「よお、勝っちゃん、久しぶりだな」歳三は勝太と目を合わせずに言った。  勝太はそんな歳三の態度を意に介さず、総司を紹介した。 「トシ、今内弟子として一緒に住んでる沖田総司だ」 「こんにちは」総司はぺこりとお辞儀した。 「おう」歳三はぶっきらぼうに返事をした  歳三の態度が変わっていたことには、勝太も気付いた。 「なんか、ピリピリしてないか?」勝太が不思議そうに尋ねた。 「別に。俺はいつもこんな感じだよ。悪い勝っちゃん、俺薬の用意しないといけないから」  そう言って、歳三はそそくさと奥の部屋に引っ込んでしまった。     
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