2.家出

7/11
前へ
/847ページ
次へ
 さくらは源三郎を見た。そしてあることを思いついた。 「源兄ぃ、今日日野に帰るんだよね?」 「そうだけど。何だよ、早く帰ってほしいみたいに…」 「そうじゃなくて、お願いがあるの」そう言って、さくらは声を落として源三郎に話した。 「俺はいいけど…本当にいいのか?」 「うん」  翌朝、源三郎の父・藤左衛門は試衛館の門前に立ち、深々と頭を下げた。 「それじゃあ、近藤先生。お世話になりました」 「また出稽古の時はよろしくお願いします」源三郎も挨拶した。 「おう、励めよ。…源三郎、その風呂敷はなんだ?」周助は源三郎が背負っている大きな風呂敷包みを出した。 「…あ、ああ、これは、父の行李に荷物が入りきらなかったので…」 「そっか。まあ、道中気をつけろよ」   藤左衛門と源三郎はもう一度お辞儀をすると試衛館の門を出た。  周助はふう、と息をついて道場へ戻った。     
/847ページ

最初のコメントを投稿しよう!

577人が本棚に入れています
本棚に追加