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さくらは源三郎を見た。そしてあることを思いついた。
「源兄ぃ、今日日野に帰るんだよね?」
「そうだけど。何だよ、早く帰ってほしいみたいに…」
「そうじゃなくて、お願いがあるの」そう言って、さくらは声を落として源三郎に話した。
「俺はいいけど…本当にいいのか?」
「うん」
翌朝、源三郎の父・藤左衛門は試衛館の門前に立ち、深々と頭を下げた。
「それじゃあ、近藤先生。お世話になりました」
「また出稽古の時はよろしくお願いします」源三郎も挨拶した。
「おう、励めよ。…源三郎、その風呂敷はなんだ?」周助は源三郎が背負っている大きな風呂敷包みを出した。
「…あ、ああ、これは、父の行李に荷物が入りきらなかったので…」
「そっか。まあ、道中気をつけろよ」
藤左衛門と源三郎はもう一度お辞儀をすると試衛館の門を出た。
周助はふう、と息をついて道場へ戻った。
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