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源三郎はふう、と溜め息をついて、これから練習で使おうとしていた竹刀をさくらに手渡した。
「敵は自分で取れ。俺が取ったって、お前はすっきりしないぞ。試衛館に帰って、近藤先生にちゃんと剣を習うんだ」
「やだよ。さくらは女子だもん」
「女子が剣術をやっちゃいけないなんて決まりがどこにあるんだよ。お前、女だからって馬鹿にされて悔しいなら、男よりも強い女になってみろよ」
さくらはハッとして源三郎を見た。
「そんなことできるの?」
「できるさ。なんたってお前は近藤先生の娘なんだから」
さくらは手渡された竹刀をじっと見つめた。
剣を習って、信吉に勝つ。
そんな自分を想像すると、なんだか信じられなかった。
いつの間にか、竹刀を握るさくらの手には、ぎゅっと力が入っていた。
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