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次の日の朝、試衛館の道場に、周助とさくらは立っていた。
周助は真剣な面持ちでさくらに竹刀を手渡すと、自分はその倍ほどの太さの木刀を手にした。
「いいか?構え方はこうだ」
周助は自分の木刀を構えてみせた。さくらも真似した。
「違う、もっと柄を強く握るんだ。で、もっと真っ直ぐ。昨日は源三郎に習ったのか?」
「はい」
「あいつはちょっと傾くクセがあるからな…」
周助はさくらの竹刀の剣先を持ってぐっと真っ直ぐに直した。
「父上、そっちはどうして違うんですか?」さくらは周助が手にしている木刀を指差した。
「ああ、これか?こっちが本物の天然理心流の木刀だ。実戦をにらんで、真剣みたいに重く作ってある。そんじょそこらの木刀とは違うんだ」周助は誇らしげに木刀を見つめた。
「さくらもそれがいい」
「バカ言え。今日始めたばかりの七歳のチビに持てるわけねえだろう」
「さくらはチビじゃありません!」
「じゃあ、ほれ」
周助は木刀を手渡した。
さくらはそれを両手で受け止め、周助が手を離した瞬間、あまりの重さに取り落としてしまった。閑散とした道場に、鈍い音が響きわたった。
「わかったか?それを持つのは十年早い」
「十年も!?」
「もっと鍛えてからってことだ。まずはほら、そいつでやるんだ」
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