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「うん、女だから女だからってバカにされた挙げ句、負けっぱなしなんて悔しいじゃん?だから、父上と源兄ぃに鍛えてもらってたんだ」
ポカンと口を開けている三人を前に、さくらは背負っている竹刀を得意気に指差した。
一方で、チャンバラをしていた男の子たちは手を止めて女の子たちを見た。
「おい、あそこにいるの、さくらじゃねぇか?」
「ホントだ。信吉にやられて逃げ帰ったさくらだぜ」
「ふん、よくまた顔出せたもんだな」
ミチがゆっくりとさくらの背後を指差した。
「さくらちゃん、信吉たちがこっちを見てるよ」
さくらはくるりと振り向き、信吉たちの方に数歩近づいた。向こうもこちらに近づいてくる。
「よぉ、久しぶりじゃねえか」
「ふん。誰のせいで…」さくらは背中の竹刀に手をかけた。
「オレと勝負しようってのか?」信吉は少し驚いているようだった。
「そうだよ」
「ちょっと待てよ。こっちはただの棒だぜ。お前だけちゃんとした竹刀を使うなんて不公平だ」
「何?怖気づいたの?」
「バカ、そんなわけあるかよ!」
「いいよ。確かに、不公平だもんね」
さくらはそう言うと、信吉の横に立っていた男の子を見た。
「平次朗、それ貸して」
平次朗と呼ばれた少年はこくりと頷くと、持っていた棒きれを黙って差し出した。
「今度は負けないんだから」さくらはスッと棒を構えた。
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