4.剣術少女・さくら(後編)

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 信吉はゴクリと唾をのむと、同じく構えた。 「やーっ!」 「えーいっ!」    さくらは父と源三郎の言葉を思い出していた。 『いいか、さくら。素振りはすべての基本だ。素振りをする時は竹刀の先、相手の目を見るんだ。あの壁を相手の目だと思って…』 『実際勝負する時はそのまま型通りってわけにはいかないけど、応用して使うんだってさ。だから、この基本の型を完璧にするんだ。ま、オレもまだ完璧とは言えないんだけどな』  誰かと戦うのは源三郎との試合をいれてこれがまだ二回目だ。しかも、信吉はひょこひょことすばしっこい。さくらの顔に一瞬、焦りの色が浮かぶ。呼吸を整え、信吉から一旦離れた。信吉は急に開いた間に戸惑ったのか、わずかな隙を見せた。   さくらは好機とばかりに、一気に打ちこんだ。 「ぜぇぇぇぇいっ!!」  信吉の棒が手を離れ、くるくると弧を描いて飛んでいった。  飛んでいった棒はカランと地面に落ちた。 「やったー!さくらちゃん!」カヨ、ミチ、キクが駆け寄ってきて、さくらに抱きついた。 「ちっくしょう!」信吉が悪態をついて、さくらに殴りかかってきた。さくらは棒を投げ捨て、応戦した。     
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