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「いえ。ただその…なんでもありません」
周助も初の気持ちはわかっているつもりだった。後継ぎを産めなかったことに対し、申し訳なく思っているのだろう。
だが、互いに「女が産まれて残念だ」という内容のことを言えば、何も知らずに傍で横たわる娘に失礼というものだ。
周助は奥に正座していた産婆に断ってから、赤ん坊を抱いた。赤ん坊はきょとんとしたような目で父親を見上げた。
「ははっ、いい目をしてるじゃねぇか」
周助は赤ん坊をゆったりと左右に揺らしながら、じっとその目を見た。この赤子は、本当に女子なのだろうか。男のように、強くて頑とした目をしている。
この子なら、あるいは――
「あなた?」
周助はハッと我に返った。
「どうかしましたか?怖い顔をして」
「いや、なんでもねぇ」
「…名前はどうしましょうか。こんな季節だし、ハル?それじゃ単純ですね。ハナ…ウメ…」
どれもしっくり来ないと言いながらも楽しそうに女子らしい名前候補を挙げていく初を、周助はじっと見つめた。
「名前…そうだな…」
周助は赤ん坊に目を戻した。
できるだろうか。突拍子もない、無謀なことであろうか。
この子を、跡継ぎに。
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