1.産声

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 否、そのうちこの子に弟ができるかもしれない。若しくは、才能ある若者を養子に迎えた方が天然理心流のためにはいいのかもしれない。天然理心流とは、結局そういう運命にあるものなのかもしれない。  その時、桜の花びらが、ふわり、と部屋の中に舞い込んできた。花びらは赤ん坊の頬にそっとのった。  周助は外を見た。庭にある一本の桜が、いつの間にか満開になっていた。周助は赤ん坊の頬にのった花びらを指で摘んでじっと見つめた。 ――大丈夫だ。  女子じゃダメだなんて道理がどこにある?  そんな女だって十分、有りじゃねぇか。 「なぁ、女子に剣術を身につけられると思うか?」花びらを見つめたまま、周助は先程からちらりちらりと脳裏をよぎっていた考えを、口に出した。  初は少し驚いたような顔をし、周助が花びらを摘んでいるのに気づくと、庭の桜の木を見た。どっしりとした一本桜からは、時々はらりはらりと花びらが舞っていた。 「この子に…理心流を?」  周助は力強く頷いた。 「きっとできますわ。女子というものは、殿方よりも、ずっとずっと強いんですから」  にこりと微笑んだ周助は、花びらを初に手渡した。 「決めた。この子の名前はさくらだ」 「さくら…?」 「ああ。桜の花が美しく咲いて潔く散るのはまさに侍の姿だ。俺はこの子に、俺の天然理心流を全て叩き込む!」 「素敵な名前ですね」  初は隣で眠る娘を見つめた。     
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