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チャンバラをしていた男の子たちが、勢い余って棒を飛ばしてしまったのだ。棒はくるくると弧を描きながらこちらに飛んできた。
そして、ガンッと嫌な音を立てて、さくらの隣で地面に絵を書いていたキクに当たった。
キクはすぐに泣き出した。今いる四人の中で最年少、五歳のキクに、よりによって当たってしまったのだった。
「おー悪い悪い」棒を飛ばした男の子、信吉がへらへらとやってきた。
「ちょっと、ちゃんと謝ってよ。きっちゃん泣いてるじゃない」さくらは立ち上がって信吉を睨みつけた。
「謝ってるじゃねーか」
「謝ってるように見えないの。あんなの当たったら痛いでしょ」
「うるせぇな。それに、わざとやったわけじゃないんだし、そんなところにいる方もいる方だろ」
互いに意地の張り合いとなり、二人は引こうにも引けなくなっていた。
「だいたい、女のくせにうるさいんだよ」
この一言でさくらの中にあった何かが切れた。他人からこう言われることがこんなにも悔しくて、心にグサリと刺さるとは。
「女のくせにって言うけどねー…」
「さくらちゃんは強いんだよ!」
さくらは振り返った。ミチが立ち上がって信吉を睨んでいた。
「へ?」さくらも信吉も驚いてミチを見た。
「さくらちゃん家は道場なんだよ!あんたたちのチャンバラなんかより、よっぽど強いんだから!」
「そ…そうだよ。あんたなんかに負けないんだから!」
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