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4.剣術少女・さくら(後編)
天保十一(一八四〇)年 春
件の神社の境内で、ミチ、カヨ、キクの三人はお手玉をしていた。
「ひゃっ…落としちゃった。やっぱりさくらちゃんにはかなわないなぁ」カヨはぺろっと舌を出すと、お手玉を拾い上げた。
「さくらちゃん…最近来ないね」キクがポツリと言った。
「やっぱり…あたしのせい…だよね」ミチが俯いた。
「あたしが、さくらちゃんは強いなんて言ったから、あんなことになっちゃって…来づらいよね」
すっかり落ち込んだミチの肩を、カヨがバシンと叩いた。
「大丈夫だよ!さくらちゃんは強いよ!きっとまたここに来て一緒に遊べるって!」
言いながらカヨも不安げな顔になった。ふと広い場所を見やると、相変わらず男の子たちがチャンバラをやっている。
そしてその向こうから、小さな人影が現れるのを見つけた。
「ねぇ、あれ」カヨは他の二人に呼びかけた。
「さくらちゃんだ!」キクが嬉しそうに声を上げた。
さくらはキク達の方に駆け寄ってくると、ニッと笑った。
「久しぶり!ちょっと稽古してたらここに来る時間なくなっちゃって」
「稽古?」三人が同時に聞いた。
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