4.剣術少女・さくら(後編)

1/8
567人が本棚に入れています
本棚に追加
/847ページ

4.剣術少女・さくら(後編)

 天保十一(一八四〇)年 春    (くだん)の神社の境内で、ミチ、カヨ、キクの三人はお手玉をしていた。 「ひゃっ…落としちゃった。やっぱりさくらちゃんにはかなわないなぁ」カヨはぺろっと舌を出すと、お手玉を拾い上げた。 「さくらちゃん…最近来ないね」キクがポツリと言った。 「やっぱり…あたしのせい…だよね」ミチが俯いた。 「あたしが、さくらちゃんは強いなんて言ったから、あんなことになっちゃって…来づらいよね」  すっかり落ち込んだミチの肩を、カヨがバシンと叩いた。 「大丈夫だよ!さくらちゃんは強いよ!きっとまたここに来て一緒に遊べるって!」  言いながらカヨも不安げな顔になった。ふと広い場所を見やると、相変わらず男の子たちがチャンバラをやっている。  そしてその向こうから、小さな人影が現れるのを見つけた。 「ねぇ、あれ」カヨは他の二人に呼びかけた。 「さくらちゃんだ!」キクが嬉しそうに声を上げた。  さくらはキク達の方に駆け寄ってくると、ニッと笑った。 「久しぶり!ちょっと稽古してたらここに来る時間なくなっちゃって」 「稽古?」三人が同時に聞いた。     
/847ページ

最初のコメントを投稿しよう!