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全ての命が平等なんて、そんなのは嘘だ。現に弱肉強食という言葉があるように、命を持って生まれたものには、最初から強者と敗者が存在している。強者は我が物顔で敗者を喰らい、敗者は毎日必死の形相で逃げ惑う。
〝命は平等〟。そんな偽善を提唱した大バカ者に、俺は指を差して言ってやりたい。貴様は鶏が首を落とされるとき、どんな声を出すのか知っているのかと。貴様が今迄食って来た豚や牛たち、植物はどんな思いを経て貴様の皿に乗っていると思う? と。
けれど、だからといって弱肉強食を非難する訳じゃない。
詰まるところ、俺が言いたいのは――。
「てめェの死に際にピーピーぼざいてんじゃねェってことだよ」
そう言って俺は、奴の首を握り潰した。
***
もう彷徨い続けて何日が経過しただろうか。
スマホの充電は切れ、持参した食料――と言っても栄養補給のゼリーだが――も底を尽き、最後の砦だったプライドすらも消失してしまいそうだ。流石にもうここら辺でもいいだと、と妥協の声が聞こえてしまう。だが、一度決めてしまったものは仕方がない。男に二言は何タラというやつだ。
俺は頭を振り、甘い誘惑を消し去ると、更に深層を目指すべく歩みを再開した。
――死ぬのなら景色の良い場所で。
そう考え、行動を開始したのは俺の記憶が正しければ二週間ほど前だった。
とある理由から就活難民となってしまった俺は、高卒から三年間で数えるのも馬鹿らしくなるくらい〝お祈りメール〟を受け取り、最後の希望! と電話した土木作業会社からも「あー……あの石動ねぇ……あー……」と遠回しに拒絶を受けたことで心が玉砕。更にはこれ以上母親に迷惑を掛ける訳にもいかない状況に陥り、頼れる友達もいない事に粉砕した心は液状化。もう俺に希望は無いんだ、と結論付けた結果、現在に至る。
正直、本気で死ぬことを考えるのなら、自宅で手ごろに済ませる方法は幾らでもあった。しかし、そこで邪魔をしたのが――というわけである。幾ら死にたいと考えても、最低限の欲はあるという事だ。
そういった経緯で、俺は今、有名な樹海を徘徊しているんだが……結局良さそうな場所は何一つ見つかりそうもない。
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