死にたいから殺してとは言ってない

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 探索一日目で見つけた少し開けた場所には既に先客が居たり、四日目に見つけた幻想的な泉では似つかわしくないものが浮いていたり、と結局全てが無駄足に終わった。そんな事が何日も何日も続くのだ。正直、体力もそうだが精神がどうにかなってしまいそう。だからもう――。  先程掻き消したばかりの誘惑がまたしても俺を襲う。だが、俺は何処まで落ちたって男であることに変わりは無い。絶対に諦めないからな。  もうここまでくると意地であるが、それでもいいからと俺は尚も足を止める事無く動かし続けた。  ――数時間後。  俺は今迄に無かった違和感を肌で感じ取った。長らくこの薄気味悪くも美しい樹海の中に居たせいか、神経が鋭くなっているようだ。  大きな大木の元に足を止めた俺は、脂汗でべた付く頬を手の甲で擦り、周囲を見渡した。しかし、先程までと何ら変わった様子はなく、寧ろ怖いくらい何時と同じ光景が広がっている。  ……おかしい。確かに今、そこはかとなく違和感を感じたのだけれど。こう……粘着質(ねんちゃくしつ)なというか、こびり付くようなというか。恐らく何者かの視線だろう。  俺は瞬時に携帯していたサバイバルナイフを取り出し、何が起こっても対応できるよう身を低く構えた。  少し自殺について語らせて欲しいのだが、確かに俺は死にたい。だが、その死に方は自分で決めたいし、痛い事も極力避けたい。それに、死に場所を探してこんな場所を何日も歩き回っているのだ。なのに結局、死因は自殺では無く動物に襲われた事が原因だーなんてことになったら、死んでも死にきれない。それは有名な自殺殺しが相手であっても同じことだ。 「……ッ!」  傍の茂みが不自然に揺れる。驚いた俺は咄嗟(とっさ)にその場を飛び退き、足元に落ちていた大きめの石ころを茂みへ蹴り入れた。  しかし、十数秒待っても変化は無い。何か見えてはいけないモノでも見えてしまったのか? いや、でも確かに茂みが動いたのをこの目で確認している。なら一体……?
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