306人が本棚に入れています
本棚に追加
/118ページ
幼馴染みの彼【2】
「夏鈴ちゃん、ちょっといいかな?」
その日の昼休み。朝の出来事のせいで、まだブルーな気持ちを引きずっていた夏鈴に、キラキラオーラ全開の美里が声を掛けてきた。
「先輩どうしたんですか?わざわざ二年の教室まで」
「うん、あのちょっと相談したいことがあって。良かったら、お昼一緒にどうかな?」
「いいですけど・・・部活のこととかですか?」
「うん、まぁ、そんなとこ。引き続きの事とかあるし」
「分かりました、じゃあ、他のマネージャーの子も呼んだ方がいいですよね?私、集めて来ます」
サッカー部のマネージャーは、各学年二人ずついて、全部で六人いる。
誰から呼びに行こうかと夏鈴が頭を巡らせていると、
「みんなは集めなくていいの。夏鈴ちゃんと二人で話しておきたいことがあって」
と、少し深刻そうに美里が言った。いつもと様子が違うようだった。
「分かりました。じゃあ、二人で食べましょうか。どこにします?」
「中庭とかどう?」
「いいですよ、行きましょうか」
夏鈴はいつもお昼を一緒に食べている友達に、今日は先輩と食べるからと断りを入れて、中庭へ出た。
初夏の中庭は、夏の草の匂いがして、心地よい暖かさに包まれていた。
美里と夏鈴は、木陰のベンチへ腰を下ろすと、お弁当を広げる。
「先輩があたしに相談って初めてですよね?どうしたんですか?何かあったんですか?」
「うん。あのさ、夏鈴ちゃんって、好きな人とかいる?」
その急な質問に夏鈴は変な胸騒ぎがした。
そして「好きな人」というワードを聞いて真っ先に碧斗の顔を思い浮かべる。
夏鈴はなんて答えたらいいか分からず、戸惑いながら、
「いっ、いないですよ。恋愛とかよく分からなくて」
と、呟いた。
最初のコメントを投稿しよう!