幼馴染みの彼【2】

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碧斗への気持ちを口にするのが恥ずかしくて、咄嗟に嘘をつく。 「本当?碧斗くんとか、その、好きじゃないの?仲良いじゃない?」 「え?碧斗ですか?ナイナイ!幼馴染みなだけで、手のかかる弟みたいな感じです。私はもっと大人の男性が好みなので」 美里のドキッとする質問に苦笑いしながら、夏鈴は更に嘘を重ねていく。 (本当は碧斗が好きだけど・・・恥ずかしくてそんなこと言えないよ・・・) 「本当?良かったー。夏鈴ちゃんがライバルだったら勝ち目ないなって思ってたから」 「え?」 「私、碧斗くんのこと好きになっちゃった。夏鈴ちゃんが碧斗くんのこと好きだったら、勝ち目ないし諦めようかと思ったんだけど。違うなら少し頑張ってみようかな」 美里の口から思ってもみなかった言葉が飛び出したので、ビックリし過ぎて夏鈴はなんて言っていいのか分からなくなった。 そんな夏鈴の様子を見て、 「そんなにビックリしたー?結構、好き好きサイン出してたから、気付かれてるかと思った」 と、美里はいたずらっ子のような顔で笑ってみせた。 そんな美里は年上なのに、とても可愛らしく見えた。そして自分がついてしまった嘘に、夏鈴はすごく後悔をする。 (こんな可愛い人に好きなんて言われたら、碧斗は単純だからすぐにオッケーしちゃうよ・・・) 夏鈴は後悔と焦りで頭の中がぐちゃぐちゃになる。 「あれ?でも先輩、蒲田(かまた)先輩と付き合ってましたよね?」 「うん、付き合ってたけど、二ヶ月前に別れたよ。私が碧斗くんが気になっちゃって、振っちゃったんだよね」 蒲田とはサッカー部のキャプテンで、美里とは美男美女カップルとして、有名だった。 蒲田はイケメンで、優しくて、リーダーシップもあって、勉強もできる。そんな完璧な蒲田には、学校一の美女、美里がよく似合っていた。 二人とも男女共に人気があって、みんなの憧れの的だったけど、女子は美里には敵わない、男子は蒲田には敵わないって分かってるから、二人の間に割り込む人なんていなかった。 そんな絵に描いたような二人を、まさか碧斗が破局に追い込むなんて。 この事実が知れ渡ったら、学校がちょっとしたパニックになるだろう。
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